3000年の密室

3000年の密室 (光文社文庫) 光文社 光文社文庫

3000年前の殺人事件!?密室状態の洞窟で発見された縄文人男性のミイラは、背中に石斧を突きたてられ、右腕を切断されていた。―サイモンと命名された彼は、学界に新たな発見と論争をもたらすが……。今度はサイモンの発見者が行方をくらます事件が起きる!作家的想像力を無限に広げ、壮大な物語を紡いだ著者のデビュー作。本格推理の一到達点! (カバー裏より)



うん、面白かった。
今生きているヒトは誰も体感したことのない、いわば別世界である3000年前の密室殺人をどうやって繙くか?まあ、それが骨子なんだろうけど、太古の被害者がもたらした波紋は考古学的にも様々な謎を持っていて、それが現代にいきる人々の空想を呼び、軋轢を生んでいく。この作品はそのやり取りが面白い。イヤミにならない程度の蘊蓄や保守派、革新派の間での会話の応酬などこれだけで充分ミステリだと思います。
ただ、それと平行して(というか物語後半になって)始まる「現代」の不可能殺人の方はなんとなくイマイチなのが残念。物語の当事者にとっては「現代」の方がインサイドなんだろうけど、物語全体の印象としては「過去」の方がインサイドで「現代」がアウトサイドっぽい印象を受けてしまいました。


それにしても・・・文章中に「サイモン」の名前を見るたびに「ポール・サイモン(Paul Simon)*1」の顔が思い浮かぶってのは・・・

*1:蛇足:もちろんSimon&Garfancleの片割れのコト