親切がいっぱい

親切がいっぱい (ハヤカワ文庫JA) 早川書房 ハヤカワ文庫JA


戦闘妖精・雪風」シリーズ、「敵は海賊」シリーズで知られる神林長平の一風変わった作品(らしい)




この作品はSFか?と訊かれれば、もちろんSFなのだけど、
じゃあ、サイエンスフィクションか?と訊かれると、なんとなく違うような気がする。


全編通してサイエンス(科学)的な個所がいっこも出てこない。
確かにSF的要素である宇宙人は出てくる。
けれどその宇宙人がいったい何しに来たのか分からない。
もちろん「宇宙人は侵略とか調査とかの目的を持たずして地球に来てはならない」
などどという決まりがあるわけではないので、無目的に地球に来たって良いワケだけど、
これだけ本筋と無関係の宇宙人ってのも珍しい。


主人公の住むぼろアパートに忽然とあらわれたかと思うと、食って飲んで寝て、
そんで粗相しまくった挙げ句、理由も言わず挨拶もせずに出ていってしまう。
当然、最後まで意志の疎通すらできない。
こーなると、彼(彼女)が宇宙人であるかすらあやしくなってくる。
しかも彼(彼女)は、その、なんというか・・・カワイイのだ。
時々不気味に見えることはあるけど、仕草が愛らしい。
慣れてしまえば、風変わりなペットとも言えなくもない。


つまり、彼のSF的要素である宇宙人が一番SF的でない要素となっていたりする。


つーか、ごちゃごちゃ書いてみたけど、
この宇宙人、ウチにも一体欲しい。ってのがホンネ。