2004-08-15 空飛ぶ馬 北村薫 東京創元社 創元推理文庫 580円(+tax) 本格推理の謎解きの興味やその過程の論理のアクロバットの面白さと、人間ドラマである「小説」の醍醐味とは、基本的に相矛盾するものであり、共存が難しいというのは、しばしば指摘されるところである。しかし、この二つの要素がきわめて幸福な結婚をした場合、どんな作品が生まれ出るか?この問いに答えるのが本書『空飛ぶ馬』である。希有のカップルを誕生させた著者北村薫氏は、ヒロインの「私」と探偵役の噺家春桜亭円紫師匠とのやりとりを通して、わたしたちの日常にひそむささいだけれど不可思議な謎のなかに、貴重な人生の輝きや生きてゆくことの哀しみが画されていることを教えてくれる。 宮部みゆき(中表紙より)