家守綺譚

家守綺譚 新潮社 1400円(+tax)

庭・池・電燈付二階屋。
汽車駅・銭湯近接。
四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々
出没数多――。
それはついこのあいだ、ほんの百年少しまえの物語。


たとえばたとえば。サルスベリの木に惚れられたり。床の間の掛軸から亡友の訪問を受けたり。飼い犬は河童と懇意になったり。白木蓮タツノオトシゴを孕んだり。庭のはずれにマリア様がお出ましになったり。散りぎわの桜が暇乞いに来たり。と、いった次第の本書は、四季おりおりの天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。(カバー帯より)



 文筆業を目指して、目下鋭意売り出し中の売れない作家である主人公が、ひょんなコトから、死んだ親友の実家の「家守」として住むことになった。時代も場所も曖昧なこの家でおこる不思議の数々。
 四季折々の草花の名前を章立てとしておくる全28章のショートショート連作。


 なんかの文学賞の候補になった作品らしいけど、忘れた(思い出したら書き直します)
 暇なとき、本屋をぶらつくのは楽しい。それが大きな書店でも十坪しかないような本屋さんであっても。そんな暇つぶしの散歩がてらに出逢う本がある。作者や作品の予備知識もなんにもないのに、妙に惹かれる本がある。もちろん読んでみて投げ出したくなるようなハズレだったりする場合もあるけれど、本作は読めてよかったな、出会えてよかったなと素直に思える、そんな本のひとつです。