梨木香歩

 ぐるりのこと

新潮社 新潮文庫 2007年7月刊 223p 420円(税込) 旅先で、風切羽の折れたカラスと目が合って、「生き延びる」ということを考える。沼地や湿原に心惹かれ、その周囲の命に思いが広がる。英国のセブンシスターズの断崖で風に吹かれながら思うこと、トルコの旅の…

 水辺にて on the water/off the water

筑摩書房 2006年11月刊 221p 1400円(+tax) カヤックで漕ぎだす、豊かで孤独な宇宙。そこは物語の予感に満ちている。 水辺でゆったりと、自分自身を自然の中に チューニングするかのように浮かんでいると、 それでも、 どこかに光があるような気がしてくるの…

 家守綺譚

新潮社 新潮文庫 2006年10月刊 205P ¥362(+tax) 庭・池・電燈付二階屋。汽車駅・銭湯近接。四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多……本書は、百年まえ、天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひ…

 春になったら苺を摘みに

新潮社 新潮文庫 2006年3月刊 254P ¥400(+tax) 「理解はできないが、受け容れる」それがウェスト夫人の生き方だった。「私」が学生時代を過ごした英国の下宿には、女主人ウェスト夫人と、さまざまな人種や考え方の住人たちが暮らしていた。ウェスト夫人の…

 沼地のある森を抜けて

新潮社 1800円(+tax) 始まりは「ぬかどこ」だった。 先祖伝来のぬか床が、呻くのだ―― だいじょうぶだ。世界は終焉を迎えない。 どんな形を取っても、何に形を変えても、 伝わってゆく何かがある。 生命は、いつか必ず、光のように生まれてくる。 (帯より) …

 りかさん

新潮社 新潮文庫 476円(+tax) リカちゃんが欲しいと頼んだようこに、おばあちゃんから贈られたのは黒髪の市松人形で、名前がりか。こんなはずじゃ。確かに。だってこの人形、人と心を通わせる術を持っていたのだ。りかさんに導かれたようこが、古い人形たち…

 ぐるりのこと

新潮社 1300円(+tax) 高千穂岳に近い山荘で出会った一頭の鹿のこと、イギリスのセブンシスターズの断崖でドーバー海峡の初夏の風に吹かれながら友と交わした会話、トルコのモスクでのヘジャーブをかぶった女たちとの出会い、イラク戦争の衝撃、少年少女によ…

 裏庭

新潮社 新潮文庫 590円(+tax) 昔、英国人一家の別荘だった、今では荒れ放題の洋館。高い塀で囲まれた洋館の庭は、近所の子供たちにとって絶好の遊び場だ。その庭に、苦すぎる想い出があり、塀の穴をくぐらなくなって久しい少女、照美は、ある出来事がきっか…

 エンジェルエンジェルエンジェル

新潮社 新潮文庫 362円(+tax) コウコは、寝たきりに近いおばあちゃんの深夜のトイレ当番を引き受けることで熱帯魚を飼うのを許された。夜、水槽のある部屋で、おばあちゃんは不思議な反応を見せ、少女のような表情でコウコと話をするようになる。ある日、熱…

 からくりからくさ

新潮社 新潮文庫 590円(+tax) 祖母が遺した古い家に女が四人、私たちは共同生活を始めた。糸を染め、機を織り、庭に生い茂る草が食卓にのる。静かな、けれどたしかな実感に満ちて重ねられてゆく日々。やさしく硬質な結界。だれかが孕む葛藤も、どこかでつな…

 西の魔女が死んだ

新潮社 新潮文庫 400円(+tax) 中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受…

 春になったら莓を摘みに

集英社 1300円(+tax) 著者が学生時代をすごした英国の下宿。かつてそこには、児童文学者ベティ・モーガン・ボーエンこと女主人ウェスト夫人とさまざまな人種や考え方の住人たちとの、騒動だらけでとびきり素敵な日々があった……。婦人の「理解はできないが受…

村田エフェンディ滞土録

角川書店 1400円(+tax) 歴史に忘れ去られた青春よ、目覚めよ。語れ。国や主義や民族を越えた遙かにかけがえのない友垣への道すじを。町中に響くエザン(祈り)。軽羅をまとう美しい婦人の群れ。異国の若者たちが囲む食卓での語らい。虚をつく鸚鵡の叫び。古代…

家守綺譚

新潮社 1400円(+tax) 庭・池・電燈付二階屋。 汽車駅・銭湯近接。 四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々 出没数多――。 それはついこのあいだ、ほんの百年少しまえの物語。 たとえばたとえば。サルスベリの木に…