レイニー・レイニー・ブルー

レイニー・レイニー・ブルー (カッパ・ノベルス) 新潮社 カッパ・ノベルス 848円(+tax)

カラーコンタクトを常用し、スポーツタイプの車椅子を操る細身の青年。鋭い眼光、怜悧な頭脳と毒を含んだ発言、なのにどこか頼りがいがあるその人柄――。青年の名は熊谷斗志八。人呼んで「車椅子の熊ん蜂」。周囲で起こった不可解な事件を推理するなかで、彼は奇跡の存在に少しだけ触れる……。常に挑戦を続ける本格推理の旗手・柄刀一が贈る、高品質傑作集!(カバー裏より)



 同じ作者の「ifの迷宮」の登場人物の一人である熊谷斗志八を主人公(?)にした短篇5作。
 「ifの迷宮」では障害者施設に入居している、知的でクールな*1十代の少年役。ただ、今作は「ifの迷宮」と比べると斗志八の年齢が10歳ほど経ているし、時代背景や世相も違うので、より現実に近いパラレルワールドが舞台と言った感じ。


 とはいえ“クールさ"がウリの斗志八はしょうがないとしても、語り部であり、斗志八と一番接する機会の多い鹿野真理江の心理描写が少なく、感情移入が非常にしづらい。
 最近、「遠きに目ありて」「チルドレン」と立て続けに障害者の登場するミステリを読んだけれども、この作品では障害者という存在を物語の中心に据えているにもかかわらず、その周囲の人々の反応が意外と淡泊。「遠きに目ありて」の真名部警部のように温かさと慈しみを持って見守るのか、「チルドレン」の陣内のように障害者であることに頓着せずハナから対等の人間であるとして臨むのか、それとも多くの小説の一般大衆のように敬遠するのか?そういった描写があまりにも少ない。
 有り体に言ってあんまり面白くないのが難点(苦笑)トリックを楽しめということか?


 蛇足になるけど、第五話「百匹目の猿」にでてくる大阪のミステリ作家のモチーフってたぶん有栖川有栖氏だと思うんだけど・・・どうだろう?

*1:と書くと格好良いけど、ぼくが感じた印象では、なまじ頭が切れるために世の中を斜に見て冷め切った人間を演出しているだけのただのクソガキ(笑)