2004-08-19 六の宮の姫君 北村薫 東京創元社 創元推理文庫 480円(+tax) 『空飛ぶ馬』『夜の蝉』『秋の花』に続く〔円紫師匠と私〕シリーズの第四作『六の宮の姫君』は、わが国には稀な書誌学ミステリーをいっていい。これはなんと、芥川龍之介の短篇『六の宮の姫君』が書かれた意図をめぐって推理するだけの話なのだ。その大胆な発想にまず唸るが、すごいのは芥川の作品や手紙、他の作家の作品などを全集や雑誌にあたるヒロインの推理がすこぶるスリリングであること。書物探索の旅そのものがミステリーに富んでいるからだろうが、それを結実させたのはこよなく本を愛する著者ならではの手腕といっていい。 北上次郎(中表紙より)